INTERVIEWインタビュー

神谷浩史(アニメ版・キヨシ役)×中川大志(キヨシ役)対談

■ 原作の魅力とは?

中川:神谷さんは、もともと原作をお読みになられていたんですか?

神谷:水島監督から「この作品をアニメ化したいと思っていて、ぜひ出演してほしい」というお話をいただいたときは存じ上げなかったので、その足で本屋さんに行って購入しました。こういう表紙なので「真面目な作品かな?」と思い手に取ってみたら……最初はどう受け取っていいのかが正直わからなくて(笑)。

中川:(笑)。

神谷:マジなのかギャグなのかがわからなかったんですけど、ラバースーツを着たあたりから「あ! こいつら馬鹿なんだ!」と思い始めて、その瞬間から「ヤバイこれ面白い!」と。ただ、ギャグ漫画というのは感性に訴えかけるものなので、何が面白いのかを言葉で説明するのが非常に難しい。自分の感性に合うとしか言えないんです。

中川:僕も、最初はこのタイトルなので、真面目な話だろうという印象があったんです。でも、登場人物がやっていることはバカバカしいんですよね。それなのに緊張感もあって、シリアスで、臨場感もすごいから、漫画の世界に思いっきり入り込めるんです。

神谷:俯瞰で見ると「こいつら馬鹿だな」と思うんだけど、つい熱中して読んじゃうんですよね。アフレコのために「このシーンはどうだったかな?」という確認のためにページを開くと、いつの間にか目的を失って読みふけってしまう。そうさせる不思議な力がある作品。その理由として、平本先生の凄まじい絵の上手さも大きいと思います。

中川:本当にそう思います! 僕は今17歳なんですけど、僕らの世代にとっては夢と欲望が詰まっているので、僕のまわりには、漫画にもアニメにも食い入るようにはまっている男子だらけです(笑)。

神谷:僕は40歳なんですが、同じですよ。男という生き物は17歳も40歳も変わらない。女性の裸への興味を含め、男ってのはこうですよと、堂々と表現してくれているから気持ちのいい漫画ですよね。

中川:僕も、何歳になってもこの気持ちを忘れたくないなって思ってます。

■ キヨシ役について

中川:神谷さんはキヨシの声を演じるとき、何を意識しましたか?

神谷:どの作品やキャラクターでも同じなんですが、「嫌われない」ことですね。作品の主人公は、みなさんが一番耳にする声なので、嫌われたら作品を見てもらえなくなってしまう。どうやったら好かれるのか具体的な方法はわかりませんが、心境的には「嫌われたくない」という思いが大前提にあります。中川さんは?

中川:僕は原作が大好きだし、この役を演じられることが嬉しくて、少しでも原作のキヨシに近づきたいという思いでやらせてもらいました。

神谷:17歳の中川さんにとってキヨシは同世代だから、自分の欲望や考えが台詞やキャラクターとして表現されていて、ある意味恥ずかしいんじゃないですか? 僕はもう一周回った場所からキャラクターを捉えているので、「このシチュエーションでキヨシだったらこう動く」と素直に役作りができましたが。

中川:男女比1対200という状況が、非現実的で夢のような世界なので、ある意味ファンタジー作品に出演している感覚でした。そこでキヨシたちは馬鹿馬鹿しいことに本気でぶつかっていくので、恥ずかしさを感じるというよりは、ノリノリで演じることができました。

神谷:それは役者さんならではの感覚ですよね。

中川:役得でした(笑)。キヨシが千代に引っ張られて女風呂に入っていくシーンなんて、「これをドラマで再現できるのか!?」と思いながら漫画を読んでいたんですね。その後届いた台本にそのシーンがしっかりあったときは嬉しくて飛び跳ねました(笑)。

神谷:うん、この子はいい子だ(笑)。

中川:ただ、さすがに現場では小さくなってしまいました。女性の裸がたくさんで少し酔ってしまって……。

神谷:凄いねー! 現実ではありえない!

■ ドラマ版第一話について

中川:神谷さんは一足早く、ドラマの第一話を見ていただいたんですよね? ありがとうございます。感想をお聞きするのが怖いですが……いかがでしたか?

神谷:漫画やアニメのキャラクターが実際にいるのは凄いことだと思いました。声質や話し方なども皆さんキャラクターに忠実で「まんまだなあ」と思って見ていたんですが、ほんと、みんな可愛いです。いやー、千代ちゃんすごい可愛かったな〜(笑)。

中川:千代ちゃん可愛いですよね(笑)。

神谷:女風呂のシーンでキヨシがテンパりすぎてラバースーツを脱ぐくだりは、原作を読んだときから「なんでお前が脱ぐんだよ(笑)!」って爆笑してしまったんですね。アニメをやっているときも、実写を見ているときも、あのシーンへのツッコミは変わらない。しかも実写のキヨシがとても立派で綺麗な肉体をしていることで、さらにおかしなことになっていたと思います。漫画、アニメ、ドラマの同じ場面で三者三様にちゃんと笑えるというのは、実は凄く難易度の高いことをクリアしていると思います。

中川:神谷さんにそう言っていただけて嬉しいです。2話以降もいろいろやらかしてますのでぜひ見ていただけると嬉しいです(笑)。

神谷:え? どんな風に?

中川:原作で平本先生の描く構図は、実写で撮るには不可能なアングルだったりしますが、果敢に再現しようとしています。

神谷:芽衣子の股間越しに見えるキャラクターとか、ピントをどっちに合わせたらいいかわからないでしょうし、どう考えてもあんなアングルを実写でやっちゃ駄目でしょ(笑)。芽衣子といえば、ドラマの芽衣子は下着を着けているんですよね。それによって理性がプラスされている分、ドキドキします。実写ならではの、プラスアルファの魅力となっていますよね。

■ 原作、アニメ、ドラマの意外な相関関係

中川:僕はドラマの撮影中にアニメのオンエアが始まったので、毎週録画をしておいて、撮影を終えてから一気に楽しく拝見したんですけど……

神谷:え? アニメを見ないでドラマを作ったんですか?

中川:はい。キャストもスタッフも誰も見ていないはずです。だから、キャラクターの声や絵に描かれていない部分の動きは、僕たちは原作漫画からイメージして演じたんですが、アニメとかぶる部分が感じられたのが嬉しくもあり驚きでもありました。アニメとドラマを作っている人たちが、原作に対して共通するものを感じていたのかなと思えて、すごく嬉しいんです。

神谷:それはすごいことだと思います。世間からはどうしても、原作のあるアニメをドラマ化したという見方をされてしまうと思うんです。でもこの作品は、原作を基点にアニメとドラマが並列に作られていた。それを念頭に漫画、アニメ、ドラマを見るとより楽しめるかもしれないですね。僕自身、それを知ることができて良かったです。実は僕も、実写を見ていてまったく違和感がなかったんです。「あ! キヨシだ!」と思ったし、他のキャストもみんなそのままだった。それは多分、原作のキャラクターが非常に優れていて、僕らがそれをリスペクトしていたという事なんでしょうね。

中川:現場も、スタッフとキャストからの原作に対するリスペクトと愛にあふれていました。だからこそ、キャラクターの再現度も高いですし、小道具の一つ一つやセットを忠実に再現できているのかなと思いました。

神谷:確かに、女風呂のシーンも、キヨシが手にしているのはアニメではスマホになっているけれど、ドラマは漫画に忠実にフィーチャーフォンを使っているんですよね。テレビ電話越しに映る映像もちゃんと入ってる。その徹底ぶりはリスペクトと愛の賜物でしょうね。

■ 二人のスクールライフ

神谷:現役高校生はどんな事してるの? 「友達の話」ってことにしていいから教えてよ(笑)。

中川:中学の頃は、この作品とは違って女子と密に関わることがあまりなくて、ほとんど男子と遊んでいました。なかでも一番覚えてるのは、掃除機のボディに乗って体育館の床下を移動する遊びです。床下への入り口を見つけて「これは行くしかない!」って。

神谷:今思うと汚いよね……(笑)。

中川:汚かったです(笑)。あとは、理科の実験中に、友達が蛇口を壊して水が吹き出したこともありました。修理のために、一時全校の水が断水しちゃったんです。そこで学校中の水道を上向きにして全開にしたら、これは面白いことになるなと思って仲間と校舎を駆けまわりました。

神谷:お前らが原因なのになんでそういうことすんだよー(笑)!

中川:で、復旧とともにボコボコボコボコっていう音が廊下に響き渡って、ブワーっと。

神谷:素晴らしい発想だね。

中川:片付けさせられました(笑)。神谷さんは何かバカなことってしましたか?

神谷:僕はある放課後、友達と四人でトランプの大富豪で遊んでたんですね。すでに大富豪には飽きているのに、なぜかやり続けていると、誰かがカードを切るときに「ウッキー」と猿の真似をし始めたんです。すると他の三人もウッキーウッキー言い出して、次第にエキサイトしてきたところで突然教室のドアがガラッと開いて「隣で授業してるから静かにしてもらっていいか?」と言われて、「え? 放課後なのに?」って。

中川:え? なんでですか?

神谷:成績優秀な生徒が集められている特進科は、普通科の授業が終わってからも、授業をやってたんですよ。彼らの教室に僕らの猿の鳴き声が響き渡っていたかと思うと恥ずかしくなって無言で帰りました。今思うと、猿の鳴きマネの何が面白かったのか全然わからないし。

中川:そういうのありますよね。今振り返ると何も面白くないんですよね(笑)。

神谷:そう。何も面白くない。でもバカだから、そのときは楽しかったんでしょうね。

中川:わかります……!

■ 作品のファンにメッセージを

神谷:今回対談させていただいて、アニメもドラマも同じ気持ちで作っているんだと感じました。そこに共通しているのは、『監獄学園』という平本先生の原作へのリスペクトですよね。アニメはひとまず終了してしまいましたが、原作はまだまだ連載中なので引き続きアニメ共々大切にしてほしいですし、これからオンエアが始まるドラマも同じスピリットが流れているので、同じように愛して応援してもらえたら非常に嬉しいなと思います。なによりも僕自身、2話以降も見なければ!と改めて思いました。アニメ以上に実写は想像がつかない部分が大きいので、どうなるのかが毎週楽しみです。

中川:漫画、アニメ、ドラマとバトンを受け継ぐ身としては、神谷さんに背中を押していただけてすごく嬉しいです! 実写は生身の人間がやることで、生々しさや臨場感という部分で、漫画やアニメのファンの方にも受け入れてもらえるのではないかなと思います。

神谷:「生々しい」というのはその通りですよね。人間がやっているから当たり前なんですけど、そこが実写版の新しい魅力でしょうね。だって一切がっかりしなかったですもん。普通は「実写化?」ってちょっと思うじゃないですか。「漫画を? しかもあのずば抜けてイカれた作品を?」って(笑)。でも、キービジュアルを見た瞬間に「あれ? これイケるんじゃないか?」と期待値がだんだん上がっている自分がいて、見てみたら実際に期待が全く裏切られなかった。一切妥協が見られない。

中川:僕もアニメを見ながら、神谷さんをはじめとする声優の方々がキャラクターの声をされていて、映像になった漫画のシーンを見ることができて、本当に幸せな気持ちでいっぱいでした。

神谷:その言葉はありがたいですね。自分の身体を使ってキヨシを表現した方が、こんなに喜んでくれているということは、多分アニメは正しかったんだと思います。今回、僕らは幸せな仕事ができたんだなと改めて実感しました。

中川:今日は本当にありがとうございました。

神谷:こちらこそ。毎週楽しみにしています!